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演 題 | 「The functionally related proteins Nup170p and Nup157p are essential for nuclear pore complex assembly in yeast. 」 |
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日 時 | 2007年12月25日(火) 15:00 |
講演者 | 槇尾 匡 (アルバータ大学細胞生物学部門) |
場 所 | 山手3号館9階セミナー室 |
概 要 | 核膜孔(NPC)は核膜に隔てられた核質と細胞質との間の物質輸送を司る巨大分子複合体であり、およそ30の核膜孔構成因子 (nucleoporin; nup)から成る。核膜孔の形成は核膜の消失、再構成の起こる有糸 分裂時(postmitotic NPC assembly)に加えて、間期においても(NPC assembly during interphase)起こることが知られている。近年アフリカツメガエルの卵抽出物を用いたin vitro再構成系などからpostmitotic NPC assembly経路の詳細な分子メカニズムが 明らかにされつつあることに対して、NPC assembly during interphaseについての理解はいまだ不十分である。我々はNPC assembly during interphase経路についての知見を得るため、出芽酵母をモデル生物として核膜孔形成過程の解析を行うことにした。出芽酵母は細胞周期を通じて核膜 を消失しないため、NPC assembly during interphaseが唯一の核膜孔形成経路となる。 出芽酵母の核膜孔構成因子Nup170pとNup157pは遺伝的に近縁であり、また両方の遺伝子を同時 に破壊すると致死となる。NUP157遺伝子が破壊されNUP170の発現が制御できるような株を作製し、NUP170の発現を抑えたところ、核膜孔の密 度が顕著に減少する様子が観察された。これは核膜孔の新規形成に欠陥が生じ、また既存の核膜孔が細胞増殖に伴い希釈されるためであると考えられる。次に、 様々な核膜孔構成因子にGFPを融合させNup170pとNup157pの両方が失われたときのそれぞれの因子の局在の様子を観察した。核膜孔密度の減少 に対応して、Cytoplasmic filamentを構成する因子は通常の局在である核周縁部のシグナルを急速に失い、細胞質中に会合体を形成する様子が確認された。一方でNuclear basketを構成する因子、あるいは核膜孔コアに位置する因子の大部分は核周 縁部に局在し続けた。また電子顕微鏡観察から、Nup170pとNup157pの両方が失われた時核膜孔と同程度の大きさのタンパク質構造体が核質側の核 膜上に蓄積している様子が観察された。これらの結果から、Nup170pとNup157pは核膜孔形成に必須の役割を担っており、両方が失われた時に核膜 孔形成の中間体が蓄積することが示唆された。最近になりいくつかの遺伝子について核膜孔形成に重要な役割を担っているとの報告がなされている。それらの結 果との比較も含め、出芽酵母における核膜孔形成の分子メカニズムについて議論する。 |
お問合せ先 | 統合バイオ・生体分子物性部門 桑島 邦博 |