銀河は宇宙の最も基本的な構成要素であり、銀河の形成と進化過程を明らかにすることは現代天文学の最重要課題の一つである。
現在有力視されている、冷たい暗黒物質が質量の大半を占める階層的構造形成宇宙における銀河の形成過程は、端的に言いうと初期に原始銀河同士の合体が起こ り、現在の銀河の母体が形成され、後期にハローガスが冷えて銀河円盤を形成されるという、二つの段階に分けることが出来る。
この二つの段階の間のバランスにより、銀河の多様性が生まれると考えられている。しかしながら、銀河形成ではガス・星と暗黒物質が複雑に絡み合い進化する ため、どのような物理がこれらを制御しているのかは自明ではなく、その研究には数値シミュレーションが用いられている。
本講演では、数値シミュレーションを用いて行われてきた銀河形成研究を概観する。そしてその問題点を指摘し、現在我々が取り組んでいる「天の川創成プロ ジェクト」について紹介する。このプロジェクトでは、従来にない超大規模銀河形成シミュレーションによって銀河形成過程の解明を目指している。
そのために我々はこれまで、(i)専用計算機を搭載した並列計算機と(ii)それを効率的に運用する並列銀河形成シミュレーションコードの開発を行ってきた。
講演ではこれらを用いて行った我々の研究成果を紹介するとともに、普段話す機会のないシミュレーションコードの実装の詳細などについても紹介する。
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