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化学反応における溶媒和の役割についての理論的考察及び固液界面における溶媒和を記述する新規積分方程式理論の構築

日 時 2011年05月18日(水) 14:00
講演者 飯田 健二 (京大院工D3)
場 所

分子科学研究所 南実験等408号室

概 要

化学反応の多くは溶媒中で行われ、溶媒和は時に反応性を決定づける主因となる。溶媒和の中心的役割を担うのは水素結合を代表とする分子論的相互作用であり、分子シミュレーション法を用いた溶媒和についての研究がこれまで数多く行われている。
一方、化学反応では電子状態の変化がその本質であることはよく知られている。
従って、溶媒和の化学反応における役割を理解するためには、溶媒和の分子論的描像、そしてそれが溶質の電子状態に与える影響を明らかにすることが不可欠である。
私は二酸化炭素によるエタノールアミンの水中での化学吸着反応を例に取り、溶媒和が化学反応で果たす役割をRISM-SCF-SEDD法を用いて明らかにした。[1] 
さらに電子状態を記述する代表的な量である軌道エネルギーが溶媒和で如何に変化するのかを理解する系統的枠組みを構築した[2]ので、それらについての紹介をまず行う。固液界面における溶媒和もまた反応性を決定づける主因となる。
固液界面での溶媒和については、Helmholtzの理論以来様々な研究がなされており、均一系における溶媒和と全く異なるということが知られている。
近年では、様々な実験及び理論により固液界面における分子論的相互作用の重要性が明らかになってきている。[3,4]
私は界面固有の特徴である異方性を効率的に捉えるために界面に対して垂直な方向と水平な方向の二つの方向に着目し、これらに沿って溶媒和構造を記述する新規積分方程式理論、2D-RISM理論を開発した。
さらに、分子性液体の拡散方程式理論であるSSSV方程式[5]と線形応答理論に立脚したSurrogate Hamiltonian[6]を2D-RISM方程式と組み合わせ固液界面での溶媒和ダイナミクスを記述する理論を開発したので、これについて紹介する。

文献
[1] K. Iida, D. Yokogawa, H. Sato, and S. Sakaki, J. Chem. Phys. 130,
044107 (2009).
[2] K. Iida, D. Yokogawa, A. Ikeda, H. Sato, and S. Sakaki, Phys. Chem.
Chem. Phys. 11, 8556 (2009).
[3] T. Fukuma, Sci. Technol. Adv. Mater., 11, 033003 (2010).
[4] I. Benjamin, Chem. Rev., 106, 1212 (2006).
[5] F. Hirata, J. Chem. Phys. 96,4619 (1992).
[6] F. O. Raineri, et al., J. Chem. Phys. 100, 1477 (1994).

お問合せ先

信定克幸(理論・計算分子科学研究領域)