分子科学研究所

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理論計算領域オープンセミナー

演 題 Understanding the photochemical dynamics from first principles: The role of Rydberg state in ethylene
日 時 2011年06月01日(水) 16:00
講演者 森 俊文 博士研究員(スタンフォード大学)
場 所

分子科学研究所 研究棟210号室

概 要

光化学反応は、基底状態では高いエネルギー障壁を持つ反応を、光吸収により励起状態へと遷移させることで選択的に引き起こす反応であり、その効率および収率の高さなどから重要である。特に、π→π*励起とそれに伴うcis-trans異性化反応は最もよく知られた例であり、エチレンの気相反応からロドプシンなどの生体内反応に至るまで、実験・理論両面から多くの研究が行われてきた。近年特に時間分解光電子分光法などが発達し、反応の非断熱遷移過程を実験から直接観測出来るようになったため、反応のダイナミクスに注目が集まっている。一方、従来の理論的アプローチからは、励起エネルギーなど静的な情報は詳し調べられているものの、ダイナミクスは、特にその枠組みの中で電子状態を十分な精度で扱うことが困難であったため、簡単な系を除いて定性的な理解にとどまっていた。

我々は、より精度の高い電子状態理論とダイナミクスの手法を組み合わせ、複雑な系のダイナミクスも記述出来る方法を開発することで、第一原理計算から実験結果を予測出来るような方法論を確立する事を目指している。具体的には、まず非断熱過程を記述するのに不可欠な非断熱カップリングをMultistate CASPT2(MSPT2)法の枠組みで解析的に求める方法を開発した。次に、これをab initio multiple spawning (AIMS)法という励起状態ダイナミクスの手法に組み込むことで、AIMS-MSPT2法を開発した。

今回は、この方法を用いて行った、エチレンの3s Rydberg状態を含めたダイナミクスの研究結果を紹介する。特に、Rydberg状態が反応のどの過程に関わっいるかを、励起寿命や構造変化の過程から調べる。さらには計算から得られた時間分解光電子スペクトルなども紹介し、Rydberg状態が実験からどう観測されるかについて議論する。

お問合せ先

斉藤真司(理論・計算分子科学研究領域)