分子科学研究所

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理論計算分子科学研究領域オープンセミナー

演 題 「非平衡状態における新しいトポロジー相の出現」
日 時 2012年07月13日(金) 17:00
講演者 北川 拓也 (ハーバード大学物理学科 大学院生)
場 所

分子研 研究棟201号室

概 要

20世紀の固体物理は「相」と呼ばれる様々な物質の状態を理解する事で進んできました。パソコンのメモリーを作るのに欠かせない強磁性や反強磁性といった性質や、応用が期待されている超伝導といった性質はどれも自発的 対称性の破れという考え方で説明されます。近年、量子ホール効果の発見とその 理解が進むにつれ、物質の位相には対称性の破れでは説明がつかない、トポロジー相という相が存在することが分かってきました。そのコンセプトを拡張し、今ではスピントロニックスから量子コンピューターへの応用が考えられるような様々なトポロジー相が提案され、実験で実現されようとしています。

この講演では、今まで平衡状態で考えられてきたトポロジー相は周期的にドライブされた非平衡状態でも実現できる事をお話しします。
一般的な考え方を説明した後、具体的に量子ウォークと呼ばれる、粒子を動かすプロトコルにおいてトポロジー相が実現される事を提案し、その特徴を確認した実験の結果をお見せします。更にもう一つの具体例としてグラフェンに円偏光を当てる事で、磁場の無い場所で量子ホール効果を引き起こす事ができることを説明します。これは光によって、Haldane modelを非平衡状態として実現するのに当たります。
時間が許せば、冷却原子を使って、動的にMajorana Fermionを 作り出す可能性についてお話しします。 更に非平衡状態においては、平衡状態にはないような新しいトポロジー現象を引き起こすことができます。これも量子ウォークや冷却原子を使って具体例を挙げて説明します。動的にトポロジー相を引き起こす事は、テクノロジーの観点においてもとても有用だと考えられます。この研究の結果は、もともとトポロジーの性質がない物質に、欲しい時に自由にトポロジー相を引き起こせるような可能性があることを示唆しています。
トポロジー相について全く知識のない方でも楽しめるよう、十分に研究の動機付けや説明をしていく予定です。大学生でも物理学科の3年生、4年生ならば理解できる内容にするつもりですので是非ご参加ください。

お問合せ先

鹿野 豊