分子科学研究所

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所長招聘特別セミナー

演 題 「天文学と物理化学:銀河中心のH3+」
日 時 2012年11月07日(水) 14:00
講演者 岡武史 Millikan殊勲名誉教授 (シカゴ大学化学科、天文物理学科)
場 所

分子科学研究所 研究棟2階 201セミナー室

概 要

水素分子に陽子が正三角形に付加したH3+は最も簡単な多原子分子であり、水素プラズマ、従って宇宙空間に最も多量に存在するイオン分子であります。陽子はH2に強く結合していますが他の原子、例えばOが近づくとそれに跳びます。こうしてできたOH+は水素引き抜き連鎖反応によりH3O+になり、それが電子と再結合してH2Oになります。宇宙の水はこうしてできます。このようにH3+は最も基礎的なProton donor即ち酸として星間分子生成の要となります。星は分子雲から産まれるので、H3+は星、惑星系、従って生命の源です。
天体物理化学の最も基礎的な研究はH3+の観測です。観測に必要な赤外スペクトルを実験室で探す研究は1975年に始められ、1980年に完成しました[1]。直ちに星間空間にH3+を探す観測が始められ、1996年に最初の信号が見えました[2]。発見に永い時間かかってしまいましたが、一旦見つかると、道は一気に拓け、H3+はいたるところで見つかり、空間のイオン化率、温度、密度、気体の分布、運動などについて全く新しい天文学的知見を与えました。特に2000年から始まった銀河中心の研究[3]は、今頂点に差し掛かるところです[4]。

[1] T. Oka, Phys. Rev. Lett. 45, 531 (1980).
[2]  T. R. Geballe, T. Oka, Nature 384, 334 (1996).
[3]  T. Oka, T.R. Geballe, M. Goto, T. Usduda, B.J. McCall, Astrophys. J. 632, 882 (2005).
[4]  T. Oka, Faraday Discuss. 150, 9 (2011).

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大島康裕