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第57回光分子科学フォーラム

日 時 2014年05月29日(木) 15:00 より 17:00 まで
場 所

分子科学研究所 研究棟2階 201セミナー室

概 要

【講演1】
講演者 : 武田俊太郎
(分子研 光分子科学研究領域 光分子科学第二研究部門 特任助教)
題目 : ハイブリッド量子テレポーテーション

概要 : 「テレポーテーション」と聞いてまず初めに思い浮かべるのは、SFで登場する人間の瞬間移動であろう。残念ながら、量子テレポーテーションで物体の移動はできない。これはあくまで量子の情報を別の場所に移動するだけの、一種の情報通信である。しかし、量子テレポーテーションは超高速コンピューターや超大容量光通信などの夢のIT技術を実現するための基盤技術として、量子情報処理と呼ばれる研究分野で中心的な役割を担っている。昨年、私は光の粒子性(量子ビット)と波動性(連続量)の両面を活用した新しいタイプの(ハイブリッドな)量子テレポーテーション実験を行った。この結果、両面の利点がうまく活かされ、従来に比べて桁違いに高効率で光子の量子ビットの情報を転送することに成功した[S. Takeda et al., Nature 500, 315(2013)]。本講演ではこの研究内容について紹介する。


【講演2】
講演者 : 田中 陽
(分子研 光分子科学研究領域 光分子科学第二研究部門 特任助教)
題目 : モノサイクルもつれ光子対と量子位相ゲートの実現に向けた光子の量子状態のコヒーレント制御
 

概要:量子光学・レーザー科学の進展に伴い、可視―近赤外波長域の光子の量子状態の操作・測定・通信に関する実験技術がこの二十年で急速に確立されつつある。その高い操作性により、量子計算機に代表される量子情報科学 [1] や古典限界を超える精度の量子計測科学 [2 ] の原理的な実証実験は主に光子により先行して達成されている。本講演ではこうした量子情報・計測科学に関する我々の実験研究 [3-6]を紹介する。
量子計測の例としてサブミクロン分解能量子光断層撮影 [7] が挙げられる。その光源として光の一振動周期内に二光子が局在する量子もつれ状態が期待されている(モノサイクルもつれ光子対) [8] 。本講演前半ではモノサイクルもつれ光子対の実現に向け、分極反転周期チャープされたMgSLT結晶によるパラメトリック下方変換を用い、モノサイクル化に向けた理論検証と超広帯域なエネルギー量子もつれ光子対の単一光子分光(波長:790-1610 nm)を実施した [3] 。加えて近年実施したオクターブスパンのエネルギー量子もつれ検証実験について述べる [4, 5] 。
さらに我々は量子計算機の大規模化を可能とする量子位相ゲート [9] の実現を目指し、高いQ値(106~7)をもつ単一発光体・共振器系による一光子レベルの非線形光学応答について検討を進めている。本講演後半では、発光体を付与しないファイバ結合微小球共振器系の実験を述べる [6] 。この系における単一光子の位相シフト分光測定及び量子状態測定を実施し、光量子ビットに対するデコヒーレンスについて議論を行なう。

参考文献:
[1] M. A. Nielsen and I. L. Chuang, Quantum Computation and Quantum Information, Cambridge University Press (2000).
[2] T. Nagata, R. Okamoto, J. L. O’Brien, K. Sasaki, and S. Takeuchi, Science 316 726 (2007).
[3] A. Tanaka, R. Okamoto, H. H. Lim, S. Subashchandran, M. Okano, L. Zhang, L. Kang, J. Chen, P. Wu, T. Hirohata, S. Kurimu ra, and S. Takeuchi, Opt. Express 20 (23), 25228 (2012).
[4] A. Tanaka et al, Proc. of SPIE 8635, 86350X (2013).
[5] A. Tanaka et al, in preparation.
[6] A. Tanaka, T. Asai, K. Toubaru, H. Takashima, M. Fujiwara, R. Okamoto, and S. Takeuchi, Opt. Express 19 (3) 2278 (2011).
[7] A. F. Abouraddy et al., PRA, 65, 053817 (2002).
[8] S. E. Harris. PRL 98, 063602 (2007).
[9] Q. A. Turchette et al., PRL 75, 4710 (1995).

 

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大森賢治