分子科学研究所

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第865回分子研コロキウム

演 題 「エレクトライドの物質科学と応用展開」
日 時 2015年01月16日(金) 16:00
講演者 細野 秀雄 教授 (東京工業大学 フロンティア研究機構&応用セラミックス研究所)
場 所

分子科学研究所 研究棟2階 201号室

概 要

 エレクトライド(電子化物)は、電子が陰イオンとして機能する物質で、James Dyeによって1983年に初めて合成された。Dyeは、液体アンモニアに金属ナトリウムを溶かし生じる鮮青色に魅せられ、その起源である「溶媒和電子」の結晶を合成したいと考えた。そこで、環状エーテル分子がナトリウムイオンを強く包接する性質に着目し、その錯イオンの充填の隙間に電子を占有させることで、結晶化に成功した。エレクトライドは斬新な概念であったため関心を集めたが、不安定なため物性測定が困難であり、研究の進展が遅れていた。ア、筆者はルミナセメントの構成成分12CaO•7Al2O3(C12A7)を使って2003年に室温・空気中で安定なエレクトライドを創り、それが金属的伝導を示し、低温では超伝導状態に転移することを報告した。
 また、この数年の間に興味深い発見が相次いで得られている。まず、C12A7エレクトライドは高温で融けている状態でも金属的な伝導を示し、それを急冷すると半導体のエレクトライドガラスが得られた。また、アニオン電子が、ケージではなく正の電荷をもつ層の間に存在する、2次元エレクトライドと見做せる物質も考えられるが、実際にCa2Nという既知物質がそれに相当することが分かった。異種の半導体の界面で存在する2次元電子ガス(2DEG)のバルク結晶と見做せるので、いろいろ興味深い電子物性が期待できる。
 物質・材料の研究で最も面白いのは、基礎と応用が分化する前のフェーズだと私は感じている。エレクトライドの研究は、まさにそれに相当している。物質のコンセプトのジャンプが全く新しい応用展開に繋がり、そこからさらに違った物質と応用の世界が広がるはずだ。
 

細野 秀雄 教授:
http://www.msl.titech.ac.jp/~hosono/

お問合せ先

山本浩史&正岡重行(2014年度コロキウム委員)