概日時計は、ほぼ全身の細胞に備わっている基本的生命現象です。うつ病やがんなど様々な疾患との関連性が知られていますが、現在でも、概日時計の原理の理解が不十分なため、外部環境の乱れが疾患の発症につながる分子基盤はよく分かっていません。本研究では、ES細胞の分化やリプログラミング技術を応用した概日時計の成立機序の解析を通して、時計機構の動作原理を明らかにし、環境適応の破綻が疾患につながる仕組みの理解を目指します。
約24時間周期の生物時計である概日時計(体内時計)は睡眠リズムや内分泌、血圧など多くの生理機能の調節に関わっており、概日時計の乱れは様々な健康障害を引き起こすことが知られています。概日リズムの恒常的な乱れにさらされるシフトワーカーは、前立腺がんや乳がんなどの発症率が有意に高いことが示されています。これは、外部環境による概日時計の異常がもたらす動的恒常性の破綻よると考えられています。また、これらの疾患の発症やストレス脆弱性には個人差があり、発生・発達期に受ける概日時計の発生への影響を注意深く見ていく必要があります。さらに、高齢者では老化に伴う概日時計障害から、睡眠障害に陥りやすくなっています。このように、概日リズムは一生にわたって健康に深く関わる生命現象として重要な研究課題となっています。
この一方で、この概日時計のメカニズムについては未だにいくつもの根源的な謎が残されています。なぜ、24時間周期のリズムをうみだせるのか?温度補償性のしくみは?極めて安定にリズムを継続できる一方で外部環境に鋭敏に反応し同調する仕組みは?など、根本的な原理の解明が残されたままになっているのです。私たちの研究室では、根源的な動作原理のメカニズムと、疾患リスクや健康問題につながる生理機能との相互作用メカニズム、の両面から概日時計の解明を目指しています。
詳細はこちらをご覧下さい。http://cimos.ims.ac.jp/se/2015/08/12cimos-1.html
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講演者詳細
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/seiri2/index.html
http://www.ips-s.jst.go.jp/j/sakigake3/saki_06.html
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