分子科学研究所

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公開セミナー

演 題 「脂質分子集合体の粗視化分子モデリング—構造変化、曲げ弾性、表面張力」
日 時 2016年03月24日(木) 16:00
講演者 芝 隼人 特任助教 (東北大学金属材料研究所)
場 所

明大寺キャンパス 南実験棟 4階 セミナー室(408)

概 要

脂質膜が変形したときの力学的性質を記述する弾性エネルギー関数は、形態転移や動的挙動をよく再現することが知られている。我々は、分子構造をベースとした粗視化とは異なる、メソスケールの物理原理に立った効率的な粗視化分子モデリングにより、脂質膜の構造変化、動的挙動を明らかにすることを目標に、研究を行ってきた。本講演では講演者のかかわった、下記の研究について紹介したい。

(i) 非イオン性の界面活性剤で構成される多層膜は、剪断下で、均質に充填された玉ねぎ型多層膜構造へと変化することが知られている。我々はメッシュレス脂質膜 模型を用いて、多層膜が剪断流下で構造形成する現象の再現と解明を目指して研究を行った。我々の剪断シミュレーションでは、流れ方向に軸を持った、ロール状のパターンが示された。この結果は実験と定性的に一致しており、大量の構造欠陥に誘導されると推測される。[1]

(ii) 弾性エネルギーの描像において、表面張力や曲げ弾性をはじめとする 弾性定数の測定において入ってくる系統的な誤差やずれの正体は実は正確に 知られていない。 我々はまず、メッシュレス脂質膜模型を用いて弾性係数が長波長極限におけるゆらぎを正確に定めることによって正確に見積もれることを示す。[2] つづいて、熱平衡状態が、Helfrich 弾性 エネルギーに正確に従う格子膜模型を導入し、膜ゆらぎを支配する表面張力が、Helfrich の書き下した表面張力と異なる張力であることを示した結果を報告する。[3]


[1]  H. Shiba, H. Noguchi, and G. Gompper, J. Chem. Phys. 139, 014702/1-11 (2013).
[2]  H. Shiba and H. Noguchi, Phys. Rev. E 84, 031926/1-13 (2011).
[3]  H. Shiba, H. Noguchi, and J.-B. Fournier, Soft Matter 12, 2373-2380 (2016).

お問合せ先

斉藤真司