分子科学研究所

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オープンセミナー

演 題 「FMO計算プログラムABINIT-MPの開発とものづくり分野への応用」
日 時 2016年08月30日(火) 13:30 より 14:30 まで
講演者 望月祐志 教授
(立教大学理学部化学科、東京大学生産技術研究所 非常勤研究員)
場 所

研究棟2階 201セミナー室

概 要

巨大分子の“分割統合”系の種々の量子化学計算法[1]の中で、フラグメント分子軌道(FMO)法[2]は方法論的な発展の多様性と応用事例の豊かさの点で、最も成功している手法の一つです。FMO法では、系全体の分極や電子の非局在化などの量子論的な効果が取り込める点で量子/古典混成(QM/MM)とは異なります。また、全系を量子論的に扱うオーダーN系とも違い、フラグメント間相互作用エネルギーなどの「物理化学的な内部情報」が得られるので、FMO法は計算対象に対する解析ツールとしての機能も併せ持ちます。FMOプログラムとしては、GAMESS-US[3]がメジャーな存在ではありますが、私たちが開発してきましたABINIT-MP[4]も専用GUIによる使い勝手の良さもあり「一定の支持」を受けています。これまでFMO計算は、フラグメント間相互作用エネルギー解析をベースにタンパク質-リガンド複合系などを対象に創薬や生物物理のバイオ系分野で主に使われてきました[2-4]。しかし最近では、ナノバイオ・非バイオ系のものづくり分野への適用など応用範囲が広がってきています。特にABINIT-MPは、ポスト「京」のプロジェクトでは、ナフィオンなどのイオン交換性高分子と水の粗視化モデリング等のマルチスケールシミュレーションの文脈で利用されることになっています。今回は、ABINIT-MPプログラムの開発と概要をお話しした後、無機表面を含む界面のモデル計算、散逸粒子動力学(DPD)との組み合わせといった新しい応用事例をご紹介させていただきます。
 

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[1] M. S. Gordon et al., Chem. Rev. 112 (2012) 632.
[2] "The Fragment Molecular Orbital Method: Practical Applications to Large Molecular Systems", (2009, CRC).
[3] D. G. Fedorov et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 14 (2012) 7562.
[4] S. Tanaka, et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 16 (2014) 10310.

お問合せ先

飯野亮太(内線:5230)