分子科学研究所

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【UVSOR特別セミナー】

演 題 『伝導性を持つ結晶のミクロ・ナノ領域の電子状態の完全解明へ』 Momentum Microscopyによる広い2次元波数空間の超高精度スピン偏極ARPES
日 時 2016年11月09日(水) 11:00 より 12:00 まで
講演者 菅 滋正先生
(阪大名誉教授/マックスプランク微細構造物理学研究所)
場 所

分子科学研究所 研究棟201号室

概 要

角度分解光電子分光(ARPES)はこの20年間で飛躍的に発展した。物質表面とバルク内部さらには埋もれた界面の電子状態を知るために数eVから数keVの光エネルギーに渡ってのARPESが行われている。さらに近年、トポロジカル絶縁体やスピントロニクス材料の例に見られるようにスピンをも測定する重要性が急増している。しかしながらその多くはシングルチャネル測定であり、高い分解能を実現するにはとてつも無く長い計測時間が必要となっている。そのため、以下のような問題がある。

 

1)表面劣化の問題がある。

2)有機物等では光照射damageの問題も深刻である。

3)特に光ビームを絞ってミクロ・ナノ領域の測定をする場合には1)2)は深刻である。

4)試料を回転して広い角度を計測する手法では光照射場所の変動によりミクロ・ナノ領域測定は不可能であるだけでなく、実験結果の正しい解釈も難しい。

 

ドイツのMPI-Halleではこれらの問題を解決するべく10年ほど前からMomentum Microscope(MM)の開発を行ってきた。MMによりスピン偏極2次元ARPES (SP-2D-ARPES)が、Mott検出器の百万倍、最近利用されるようになったFe-O VLEED検出器の1万倍の効率で可能となっている。最高性能のバージョンではないものの一部で商品化も行われており、今後、このSP-2D-ARPES測定法はミクロ・ナノ領域の完全電子状態解析だけでなくスピン偏極光電子ホログラフィーなどの分野でも主流となると考えられている。

本セミナーでは、現在、開発が進んでいる超高精度装置と実際の複数の測定例を紹介するとともに、この新たな顕微分光装置の利用によって期待される将来展望を述べたい。

お問合せ先

小杉 信博