分子科学研究所

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演 題 「バナナ状タンパク質の自己集合による生体膜の形態変化」
日 時 2017年02月17日(金) 16:00 より 17:00 まで
講演者 野口博司 准教授 (東京大学物性研究所)
場 所

分子科学研究所 研究棟201室

概 要

生体膜に囲まれた様々な形状の細胞内小器官があるが、それらの形状は時々刻々と動的に変化している。これらの形状を決めるメカニズムの解明を目的として研究を行っている。最近、生体膜に吸着するバナナ状のBARドメインを持つタンパク質が多く見つかっている。吸着ドメインが曲率を持つため、ドメインに沿って脂質膜を曲げてチューブ状に変形させる。しかし、これらのチューブ形成機構の詳細はまだよくわかっていない。

我々はメッシュレス膜模型を用いたシミュレーションによってこのようなバナナ状タンパク質の自己集合とそれに伴う膜変形を研究した[1-4]。タンパク質は膜粒子をつないだ曲がった棒として粗視化した。

タンパク分子同士に直接の引力を与えなくても、タンパク質の自発曲率を上げていくと膜を介した相互作用で自己集合する。しかし、通常の相分離と異なり、この集合はタンパク質の軸に沿った方向と垂直方向の2つの1次元の集合に分かれて起こることを明らかにした[1]。ベシクルでは自発曲率を上げていくと赤道上への集合がまず起こり、その後、一箇所に集合する。集合に伴いベシクルは変形する。高タンパク密度では多面体状ベシクルが形成する[2]

また、これまでの研究ではタンパク質に沿った自発曲率のみが考慮されていたが、側方に弱い自発曲率を加えることでチューブ形成のダイナミクスが大きく変わることが分かった[3]。平衡状態の性質はそれほど変化しないが、集合途中にみられるネットワーク構造の安定性が変わることによって、チューブ形成速度が大きく変わる。側方に負の自発曲率を持つ場合、図1に示すように膜全体に広がったネットワークを形成し、ネットワークからチューブが伸びる。それに対して、側方に正の自発曲率を持つ場合は、ネットワークは形成せずに、多くの短いチューブが形成される。このように、側方方向の相互作用も無視できないことが明らかとなった。

1. H. Noguchi, EPL 108, 48001 (2014).
2. H. Noguchi, J. Chem. Phys. 143, 243109 (2015).
3. H. Noguchi, Sci. Rep. 6, 20935 (2016).
4. H. Noguchi, Phys. Rev. E 93, 052404 (2016).

お問合せ先

石崎章仁