分子科学研究所

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山手イブニングセミナー

演 題 「クマムシ乾眠機構の適応と進化」
日 時 2017年06月26日(月) 16:00
講演者 荒川和晴 先生 (慶應義塾大学環境情報学部・先端生命科学研究所)
場 所

山手3号館2階西 大会議室

概 要

水は全ての生物にとって生命活動を行う上で必須であるが、個体サイズが一定以下の微小生物においては、周囲の環境が乾燥する速度に比して移動速度が小さいため、その場に留まって耐える形での適応が観察される。そして、急速な乾燥を伴う過酷な環境においては、完全な脱水に耐えるために一時的な生命活動の停止までもが進化的に獲得されている。陸生のクマムシの多くはこの「乾眠」と呼ばれる機構を持ち、一部の種では数十分という極めて迅速な乾眠移行及び復帰が可能なことが特徴であるが、これは水の存在を前提とする現代の細胞生理学の根底を問い直す。
そこで、我々は、同じヤマクマムシ科(Hypsibiidae)に属しながらも乾眠能力が強い種(ヨコヅナクマムシ)と弱い種(ドゥジャルダンヤマクマムシ)を用いてゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームなどのマルチオミクス解析を行い、さらに超微量解析系によって野外サンプルの解析を行うことで、乾眠の分子機構やその進化を明らかにすることを試みている。現在までに、クマムシ特異的な乾眠関連遺伝子を多数発見し、また、似た部品(遺伝子セット)を使いながらも、応答のダイナミクスを変化させる事で乾眠適応に多様性を持たせていることなどが徐々にわかってきた。
本講演では、恒常的な代謝活動が見られる「生」、不可逆的な代謝活動の停止である「死」に加え、第三の生命状態と位置づけられる可逆的な代謝活動の停止「乾眠」を研究することによって、生命活動とは何か、という究極の問いに迫りたい。

お問合せ先

加藤晃一