分子科学研究所

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第22回CIMoSセミナー

演 題 「暗黒の深海底で進行する電気化学的CO2還元反応」
日 時 2020年01月31日(金) 15:00 より 17:00 まで
講演者 中村龍平(理化学研究所 チームリーダー/東京工業大学 教授)
場 所

分子科学研究所 研究棟201号室

概 要

我々が目にする生態系は、光合成による二酸化炭素(CO2)の固定、つまり太陽光エネルギーを利用した有機物合成によって支えられている。一方、1979年に見つかった高温の黒煙を噴出しながら生態系を支えている煙突状の構造物(深海熱水噴出孔~Black Smoker Chimney)は、「地球上の生態系は、光合成によるCO2固定反応に依存している」という科学者の常識を一変させた。さらに、2001年には、アルカリpHの熱水を放出する巨大な熱水噴出孔(White Smoker Chimney)、その僅か4年後には、類似の熱水活動が土星の衛星エンセラダスにおいても確認された。この40年における極限環境科学の目覚ましい進展は、生命に対する知のフロンティアを拡張し続けている。しかし、光合成と並ぶ地球上の2大CO2固定システムにもかかわらず、熱水噴出孔が物理化学の中心課題になったことはない。そのため、光の届かない環境におけるエネルギー変換、そしてCO2還元反応に関するケミストリーは未開の領域となっている。

本発表では、演者らが見出した熱水噴出孔が媒介する化学勾配・熱勾配の電気エネルギーへの変換反応を踏まえ、電気化学エネルギーが駆動する新規なCO2還元反応の可能性について紹介する。特に、最近の研究により、深海底における発電現象は、生命が誕生する以前の初期地球から断続的に続いている現象であり、CO2からアミノ酸等を合成する還元的クエン酸(rTCA)回路が、硫化鉱物を触媒として電気化学的に進行していた可能性が浮上してきた。当日は、深海底で進行していたと考えられるカスケード電気合成システムと反応トポロジー、そして現在研究が活発化しているCO2の有効利用を指向したケミストリーとを比較し、地球に優しい未来の物質生産について議論したい。

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お問合せ先

協奏分子システム研究センター
秋山 修志