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光合成反応中心タンパク質における酸化還元電位の理論解析
セミナー・イベント詳細
光合成反応中心タンパク質における酸化還元電位の理論解析
演 題 | 光合成反応中心タンパク質における酸化還元電位の理論解析 |
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日 時 | 2011年01月20日(木) 16:00 |
講演者 | 石北 央博士 (京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット、 JSTさきがけ「光エネルギーと物質変換」) |
場 所 | 分子科学研究所 研究棟210号室 |
お問い合わせ先 | 斉藤真司(理論・計算分子科学研究領域) |
概 要 | 光合成反応では、太陽光の光エネルギーを生物が利用しやすい電気化学エネルギーに変換する。この過程は、生体膜中の光合成反応中心タンパク質で行われる。シアノバクテリアから高等植物では、Photosystem II(PSII)とPhotosystem I(PSI)の2つの反応中心タンパク質が共役して行うのに対し、紅色光合成細菌ではPbRC(Purple bacterial photosynthetic Reaction Centers)が行う。PSII、 PSI、PbRCは詳細は異なるものの、タンパク質構造・機能には多くの共通点が見受けられる。特に、PSIIとPbRCはコファクターの配置が似ており、総称としてType II反応中心とよばれている。Type II反応中心ではクロロフィル(Chl)2量体が1対(PSII ではP680、PbRCではP870)、その近傍に単量体のChl(アクセサリーChl)1 対、フェオフィチン(Pheo)1対、キノン(Q)1 対、そして非ヘム鉄が存在する。これらは、Chl 2 量体の中点と非ヘム鉄を結ぶ疑似C2対称軸に配置されているため、2つの電子移動経路が存在するように見える。しかし、実際の電子移動は、一方の電子移動経路(PSII:D1,PbRC:L)でのみ観測され、もう一方の電子移動経路(PSII:D2、PbRC:M)は不活性である。反応中心の電子移動に関する研究は、分光学的手法などの実験的手法を中心に世界中で行われている。しかし、コファクターの多い複雑な膜タンパク質であること、実験的手法による解析がしばしば困難であること(タンパク質中に存在する他の色素分子の分光吸収体が重なってしまうなど)により、未解明の部分は多い。一方、近年のX 線結晶構造解析の著しい進展により、PSI・PSII共に原子レベルで詳細なタンパク質構造が明らかになりつつある。ここでは、タンパク質の立体構造情報を用いた理論解析により、PSIIでの水分解を可能とするChl 2量体P680の酸化力について述べる。 |